
वयधम्मा सङ्खारा, अप्पमादेन सम्पादेथ
「すべてのものは無常です。精進し成就させてください。」
ヴェーダナーの種類とヴェーダナーを超えた境地
ヴィパッサナー研究所
ヴィパッサナー瞑想を実践する人にとって、感覚(ヴェーダナー vedana)は数えきれないほど多様です。しかし、古い経典ではこれらを大きく3種類に分類しています。すなわち「スッカ(sukha/快)」「ドゥッカ(dukkha/苦)」「アドゥッカマスッカ(adukkhamasukha/苦でも快でもない、中立的感覚)」の3つです。こうして3つにまとめられている理由は明らかで、ヴィパッサナーの実践者が「アニッチャター(aniccata/無常)」、つまりすべてが生起し消滅していく真実を観察するための便利な枠組みとして使いやすいからです。そのため、『サティパッターナ・スッタ(Satipatthana Sutta)』の「ヴェーダナーヌパッサナー(vedananupassana/感覚の観察)」の部分でも、この3つが示されています。(※脚注:1)
先ほど述べたように、感覚そのものは多種多様です。その様子は、空を吹き渡るさまざまな風や、公の休憩所に現れてはしばらく滞在し、また去っていく旅人のようだ、とも例えられています。(※脚注:2)
一方で、ほかの経典ではブッダがもっと多くの種類のヴェーダナーについて語っている場面もあります。これは、それぞれの文脈や相手に応じて解説がなされたためです。たとえば、『サンユッタ・ニカーヤ(Samyutta Nikaya)』にある「パンチャカンガ・スッタ(Pancakanga Sutta)」(※脚注:3)では、大工のパンチャカンガと尊者ウダイ(Udayi)の対話が記録されています。パンチャカンガは「ブッダは快(スッカ)と苦(ドゥッカ)の2種類の感覚しか説いていない」と主張します。しかし、尊者ウダイは「ブッダは快、苦、そしてアドゥッカマスッカの3種類を説いている」と言います。アーナンダ(Ananda)がブッダにこの件を伝えたとき、ブッダは「2つだけではなく3つのときもあるし、ときには5つ、6つ、18、36、さらには108というふうに、さまざまな分け方をしてきた」と答えました。(※脚注:4) ただしブッダは、「数字にとらわれるのではなく、あくまでその説法の文脈や目的を理解しなければ、本当の意味を見失ってしまい、無駄な議論に陥ってしまう」とも述べています。
ブッダがあるときは「ヴェーダナーには身体的(カーヤika vedana)と心的(チェータシカ cetasika vedana)の2種類がある」と言うことがあります。しかし、この文脈を十分に理解しない人は、「身体に起こる感覚を心なしに体だけで感じるなんてことがあり得るのか」と疑問に思うかもしれません。実際には、身体に生じた感覚は体そのものが感じているのではなく、必ず「心」が感知しています。ですから、どんな感覚であれ、体と心の両方がそろって初めて感じられるのです。それにもかかわらず、ブッダが「身体的ヴェーダナー」と「心的ヴェーダナー」を区別して説くのはなぜでしょうか。ブッダは、「自分が2種類のヴェーダナーについて語るときは、その説法のなかで特定のポイントを明らかにするときである」と言っています。
つまり、体に起こる感覚に対して「心がかき乱されない状態」で感じるとき、それを「身体的(カーヤika)な感覚」と呼ぶ、ということです。これは、アリヤサーヴァカ(ariyasavaka/高い境地に達した弟子)の心の状態を指しています。ところが、一般の人に同じ感覚が起こると、心は動揺し乱されてしまいます。ここでブッダは、この違いを踏まえて、ヴェーダナーを「カーヤika(身体的)」と「チェータシカ(心的)」の2つに分けて説かれたのです。よく訓練されたアリヤサーヴァカは、ヴェーダナーのアニッチャ(無常)性を心得ており、感覚に縛られず(ヴィサミュッタ visamyutta)にいられます。しかし、普通の人はヴェーダナーの真の性質を知らず、心が乱れて感覚に囚われ(サミュット samyutta)てしまいます。ブッダはこの違いを、「無知ゆえに下劣な心的状態か、それとも常にアニッチャ(生起と消滅)を正しく理解して注意深く観察しているか」という観点で説明されます。後者は、サトー・サンパジャーノ(sato sampajano/気づきと正しい理解を持つ)という状態なのです。(※脚注:5)
また、「パンチャカンガ・スッタ」の中でブッダは、感覚を5種類のスッカ(快)のヴェーダナーとして説明する場面があります。これは、五感(眼・耳・鼻・舌・体)との接触による快感(パンチャ・カーマグナ panca kamaguna)を取り上げたものです。ブッダは、「一般の人が感じる快(カーマスッカ kamasukha)は低いレベルであり、瞑想者が第一禅定(パタマ・ジャーナ pathama jhana)、第二禅定(ドゥティヤ・ジャーナ dutiya jhana)、第三禅定(タティヤ・ジャーナ tatiya jhana)、第四禅定(チャトゥッタ・ジャーナ catuttha jhana)で得る快とは質がまったく違う」と説きます。これら4つの禅定のスッカ(快)にも段階的な深まりがあり、さらに「空無辺処定(アーカーサーナンチャーヤタナ akasanancayatana/第五禅定)」で得られるスッカは、先の4段階よりも優れています。その次の「識無辺処定(ヴィンニャーナーナンチャーヤタナ vinnananancayatana/第六禅定)」、「無所有処定(アキンチャンニャーヤタナ akincannayatana/第七禅定)」のスッカはさらに高く、第八禅定と呼ばれる「非想非非想処(ネーヴァサンニャーナーサンニャーヤタナ nevasannanasannayatana)」で得られるスッカは、さらに比べ物にならないほど高いのです。しかし、これらですら「最高のスッカ(パラマン・スッカ paramam sukham)」とは呼べません。
興味深いことに、ブッダはまだ悟りを開く前(菩薩 bodhisattaの頃)に、多くの聖者や修行者を訪ね、さまざまな苦行や瞑想法を学びました。その中でも著名だったのが、アーラーラ・カーラーマ(Alara Kalama)とウッダカ・ラーマプッタ(Uddaka Ramaputta)です。まずアーラーラ・カーラーマのもとを訪れ、第七禅定(無所有処定 akincannayatana samadhi)にすぐさま達しましたが、これが最終的な解脱ではないと感じ、次にウッダカ・ラーマプッタのもとへ行きました。そこでは第八禅定(非想非非想処定 nevasannanasannayatana)を修得しましたが、これも解脱の究極ではないと確信し、彼のもとを去ったのです。(※脚注:7) その後、長い間厳しい苦行をして身体を痛めつけた末、現在のブッダガヤにたどり着き、大樹の下に座って最終的に悟りの境地に達しました。ブッダはこのときの最高の禅定状態を「サンニャーヴェーダイト・ニローダ・サマッパッティ(sanna-vedayita-nirodha samapatti)」と呼びました。これは、名色(ナーーマ・ルーパ nama-rupa)を超え、ヴェーダナー(感覚)とサンニャー(知覚)をも超えたところであり、「永遠のスッカ」、つまり世俗の快感を超えた最高の幸福を味わう境地です。この段階まで達したヴィパッサナー瞑想者は、第八禅定をさらに超え、サンニャーとヴェーダナーの消滅(ニローダ nirodha)を体験します。ブッダは「ヴェーダナーとサンニャーが滅尽する境地を、アニッチャへの浄らかな智慧によって体験し、そこに到達した者は煩悩(アーサヴァ asava)を断じ、世間から自由になる」と説きました。(※脚注:8)
ブッダは、この「サンニャーヴェーダイト・ニローダ・サマッパッティ」が「マーラ(死神・煩悩の擬人化)の支配を超える最高の境地」だとして、最初の5人の弟子(パンチャヴァッギヤ・ビックhu)に教えました。(※脚注:9) これが、瞑想者が体験する究極の「パラマン・スッカ(paramam sukham/最高の幸福)」であり、「サンティ・ヴァラパダン(santi varapadam/最上の平安)」というものです。
当時使われていた日常言語には、禅定の深い段階で体験されるスッカを表す正確な言葉がありませんでした。そのため、ブッダは一般的な「スッカ」という語を繰り返し使っています。しかし実際には、その「スッカ(快)」には、段階や深まりによって大きな違いがあるのです。それは実際に実践してみて初めて理解できるものでした。
ブッダは、「五根(ごこん indriya/五つの中心的な力)」に関連づけて、ヴェーダナーを以下の5つに説明したこともあります。
スッキンドリヤ(sukhindriya/肉体的快)
ドゥッキンドリヤ(dukkhindriya/肉体的苦)
ソーマナッシンドリヤ(somanassindriya/心の喜び)
ドーマナッシンドリヤ(domanassindriya/心の悲しみ)
ウペッキンドリヤ(upekkhindriya/平静・中立の感覚)(※脚注:10)
また、「六つの感覚の門(六処 rokusho)」を通じて起こるヴェーダナーとして6種類に分けるときもあります。6種類とは以下のとおりです。
チャッカフソータ(cakkhusamphassaja vedana/目の接触による感覚)
ソータサンフソーヤ(sotasamphassaja vedana/耳の接触による感覚)
ガーナサンフゴーヤ(ghanasamphassaja vedana/鼻の接触による感覚)
ジーヴハサンフゴーヤ(jivhasamphassaja vedana/舌の接触による感覚)
カーヤサンフゴーヤ(kayasamphassaja vedana/身体の接触による感覚)
マノサンフゴーヤ(manosamphassaja vedana/心の接触による感覚)
このように、ヴェーダナーはどのような状況・文脈で語られているかをまず理解する必要があります。(※脚注:11)
さらに、スッカ・ドゥッカ・ウペッカー(平静)などに、心の働きである喜びや悲しみ、中立の要素を組み合わせると、「18種類のヴェーダナー」という数え方にもなります。
ある場合には、次のように「36種類」と言うときもあります。
家(在家)に根ざす喜び(ゲーハシターニ somanassa)6種
出家(離欲)に根ざす喜び(ネッカンマシターニ somanassa)6種
家に根ざす悲しみ(ゲーハシターニ domanassa)6種
出家に根ざす悲しみ(ネッカンマシターニ domanassa)6種
家に根ざす中立(ゲーハシターニ upekkha)6種
出家に根ざす中立(ネッカンマシターニ upekkha)6種
ここで言う「出家に根ざす(ネッカンマシターニ)」というのは、実際に僧侶の衣を着ているかどうかではなく、心が真に離欲(欲を離れた境地)している状態を指します。たとえ在家であっても、瞑想を深めて高い境地に到達していれば、真の離欲を得ていると言えます。反対に、形の上では出家していても、欲や執着で乱されている状態なら、心はまだ「家(在家)」にいると同じということです。
『ダンマパダ(Dhammapada)』には、次の有名な偈(げ)があります。(※脚注:12)
「たとえ華やかに着飾っていても、
もし心静かに暮らし、欲望を克服し、感覚を制御し、
四聖道(しせいどう)に確信を持ち、完全に清らかで、
すべての生き物に対して害意の棒を捨てているならば、
その人はバラモンであり、サマナであり、ビック(僧)である。」
たとえば、チッタ・ガハパティ(Citta Gahapati)は一生在家のままでしたが、ダンマを深く理解・実践し、「アナーガーミ(anagami/不還者)」の境地に至りました。これは、多くの僧侶よりも高い境地でした。そのため「ダンマ(法)を説くのに卓越している人」と評されたのです。(※脚注:13) 『サンユッタ・ニカーヤ』の「アチェラ・カッサパ・スッタ(Acelakassapa Sutta)」(※脚注:14)では、チッタ・ガハパティが「自分は四つの禅定を修め、もしブッダより先に死んだならば、ブッダは自分を『二度とこの世に戻ってくることのない存在』と証言するだろう」と語っています。(※脚注:15)
逆に、正式に出家していてもまだ修行が浅く、心が動揺や欲望に囚われることもあります。ブッダの異母弟である尊者ナンダ(Nanda)は、ブッダ自身から出家を授けられたにもかかわらず、かつての婚約者への執着で心が乱されていました。(※脚注:16) これは真の意味での「出家に根ざす(ネッカンマシターニ)」状態ではありません。
このように、ヴェーダナーの数え方は2、3、5、6、18、36、108など、場面や説明の目的によって変わります。それぞれの数や分類は、教えの一部分として理解されるべきもので、その文脈を踏まえてこそ正しく意味が伝わります。
脚注(元の英文の出典と対応)
1.Digha Nikaya 2.380; Majjhima Nikaya 1.113
2.Samyutta Nikaya 3.5.512
3.Ibid. 3.5.517-523
4.Ibid. 3.5.517
5.Ibid. Salla Sutta 2.4.254
6.Ibid. 2.4.267
7.Majjhima-Nikaya, Pasarasi Sutta, 1.277
“Nayam dhammo nibbidaya, na viragaya na nirodhaya na upasamaya na abhinnaya na sambodhaya na nibbanaya samvattati.”
8.Ibid. 1.271
“Bhikkhu sabbaso nevasannanasannayatanam samatikkamma sanna-vedayita-nirodham upasampajja viharati. Pannaya cassa disva asava parikkhinahanti.”
9Loc. cit.
10.Samyutta Nikaya 3.5.501 - 507
11.Loc. cit.
12.Dhammapada 142
13.Anguttara Nikaya 1.1.175 - 186
14.Samyutta Nikaya 3.4.351
15.Ibid. 3.4.54 - 55
16.Samyutta Nikaya 4.2.222